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はっぴぃ☆きゃんでぃ♪どりぃみんないと♡

 

 

 


 祭りの後の静けさとはいうけれど。皆が寝静まった本丸には、心を穏やかにしてくれる暖色の明かりも消えてしまって。妖しく降り注ぐ月光だけが、わたしを見下ろしている。
 子供たちとめいっぱいはしゃいだのか、すやすやと健やかに眠る愛しい子をじっと見下ろす。今夜は皆から食べきれないほどの菓子を貰って、良い子の謙信はわたしや小竜達にもにお裾分けしてくれて、たくさん貰ったけど、大切に少しずつ食べるのだぞ、と棒突ききゃんでぃを頬張り笑っていた。
 和洋折衷、お祭り大好き、事あるごとに行事だぱーてぃだと宴をあげるのが好きな審神者だからか、わたしと謙信が住まう本丸は毎日賑やかだ。先日も長光の兄弟が実装一周年を祝われ、盛大に酔っ払い何故か大号泣ーーわたしの外套が濡れに濡れたわけだが。ちょっとした失敗や苦い経験なんて、少し経てば笑い話になってしまうんだろう。そう思えるのも、子供たちの、謙信のおかげだ。
「ん……あつき……?」
 眼を擦り、謙信が薄目を開けてこちらを見上げていた。ああ、起こしてしまったようだ。わたしとしてはもうしばらく寝顔を眺めていてもよかったのだが。
「あつき……どうしたの……?」
「謙信……とりっく、おあ、とりーとだぞ♡」
 胸が緊張と、それ以上の期待で高鳴る。囁いた声は震えていたがもう構っていられない。羽織っていただけの寝巻きを畳へ落とし、そこで初めて謙信がわたしの格好に気付いたのか、つぶらな瞳を一層まん丸にして驚いた顔を見せた。
「あっあつき?! そ、そのかっこう……!」
 包帯のみを体に巻き付け、わざと際どいところを薄く。思ったより時間がかかってしまったが、姿見で見た限り仕上げは上々だった。木乃伊らしく傷跡まで描いてみたが、眼を泳がせつつもわたしの体をくまなく凝視する謙信に喜悦する。露出した肌に突き刺すような視線に、炙られたように全身にどっと熱が込み上げてくる。
「ああ♡謙信のために、ひとはだぬいだのだぞ♡」
 文字通り一肌脱いだわたしは、硬直したままの謙信の布団を引き剥がし乗り上げた。身を捩れば、包帯が胸元のはしたなく色付いた粒に擦れ、背筋をゾクゾクと快感が駆け抜けていく。寝巻き越しにしっかりと質量のある熱を感じ、甘ったるく啼いてしなだれかかった。
「あっ♡ふふ、謙信はとてもげんきで、よいこだなっ♡」
「あつきっ、だ、だめなのだぞ! こんなことっ……」
 尻たぶを股座に擦り付けて、わたしの躰全体で愛撫する。包帯がめくれ上がって、ここへ来る前にたっぷり慣らした“くち”が、謙信を求めて収縮した。灯のない室で秘めやかに行われるこの行為がなんなのか、幼い外見である謙信も当然ながら知っている。謙信がわたしを「そういう意味」で好いていてくれることも、わたしが同じように謙信を想っていることも、知っているのだ。ただ、戦いに身を投じる中で、欲に溺れるのを良しとしないと、この子がわたしの身を考えてくれているのも分かっている。
 だが。わたしは、もう、夜な夜な一人寂しく己を慰めるだけでは、満足できなくなってしまった。この子が、何より愛しい謙信が、ほしい。
「ん♡んっ♡謙信の、ふとくて♡あまいきゃんでぃをっこのくちにくれ♡」
「ああっ! だめっだめだよあつきっ! いけないことだよ、こんな……!!」
「謙信♡わたしはよいこの謙信をたぶらかす、あくまなのだ♡だから……イケナイコトを、しよう♡」
 真っ赤な謙信が必死に首を振る姿も可愛くて、どうしようもなく愛おしくて、胸が暖かいもので満たされる。反対に下腹は貪欲に眼前の雄を求め疼きは止まず、天を指す謙信をそっと大事に握り込み、切っ先を『鯉口』に当てがった。
「わたしを謙信の『さや』にしてくれ……♡」
「あつき……!」
 そしてわたしは――。


 バチッと音がするほど眼を見開き、わたしは飛び起きた。股座の濡れた感触に絶望し顔を覆う。
「ゆ、め……ゆめ、だったのか」
 まるで砂糖小さじ一杯ほど「夢で残念だった」と感じてしまったことに、今すぐにでも死んでしまいたいとすら考えてしまった。砂糖のように甘さのかけらもない、そもそも妙な喩えをしてしまったー―主人に貰った身であるのにと、螺旋状に後悔の階段を転がり落ちてゆく。
 なんという夢を、見てしまったのだ。ああ夢とはいえ、わたしはなんてことを……わたしは……保護者失格だ……!
 秋の深まった明け方はひんやりと冷たい。わたしを責めるかのように凍えそうな空気に、いっそもういちど布団を被ろうかと考えてやめた。兎にも角にも着替えをせねば。気持ち悪い感触と、隠し通したい慕情とを、あの子の起き出してしまう前に洗い落として隠してしまわねば。
「――あつき?」
「!!」
 冗談でなく一寸ほど体が浮いた気がする。正座した状態で。一人部屋だから、確認してくれる相手はいなかったが。いやむしろ今回は一振りでよかったと考えるべきか。
「あつき、ねてるのか?」
「あ、ああ――! すまない、はいってくれ」
 室内でこの寒さだ、廊下で立ち尽くす謙信は余程寒かろうと、取り敢えず下半身を布団で覆って声をかける。
「ど、うしたんだい?」
「うん……」
 珍しくわたしより早く起きたのか謙信はじゃーじ姿で、でもぴんと跳ねた寝癖や皺になったしゃつなど、慌てて着替えたことが窺える。りんごのように瑞々しく赤い頬をして、少々熱っぽく潤んだ美しい浅縹色の双眸が、わたしを捕えた。じり、と近寄ってきて、手を握られればひどく熱を持っていた。果たして熱があるのはわたしなのか。
「ね、ねえ、あつき……あのねっ、ぼくへんなゆめをみたのだぞ……!」
「ゆっ、ゆめ、かい……?」
「へんっていうか、あつきがでてきて……ほうたいぐるぐるまきで、ぼくは……」
「!?」

▶︎とぅびぃこんてぃにゅうど……?
 

since  ​2019-04-14 2015-2019 / Yuzuriha Yogre

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