※効果には個刃差があります
偶の非番の日課となって久しい日帰り修行に同行者が増えたのは景色が雪に覆われる前のことであったろうかと、山伏国広は轟々と響く滝音に負けない素振りの掛け声を聞きながら思う。
薄藍の空は山桜がよく映え、未だ肌寒さの抜けない晩春の野山は新緑も芽を出すには早い。本丸を下に臨む裏山には程よい岩肌の傾斜や滝行にぴったりの瀑布が混在しており、修行だけでなく鍛錬にももってこいだ。自然と男士達も山を登っては稽古する場面を見かけるようになったが、中でも今雄叫びを上げる刀は本当に強さを求める気位が高いと感心する程だ。
飛沫を受けながら真言を唱える。芯まで冷え切った躰はしかし熱を帯びていて、やがて漣を立てていた精神は凪いで研ぎ澄まされてゆく。いつの間にやら声は止み、太陽も真南を過ぎ西へ傾げ始めたので水垢離を終え川縁へと上がった。軽く搾ったところで水を吸い重たい白装束の帯へ手を添えながら、同行者へ呼びかける。
「同田貫ーー?」
「ーー」
茂みからの葉音に振り返れば、蹲る刀を捉え慌てて近寄る。
「どうしたのだ、どこか痛むのか」
「っちが……何か、躰が熱くて……」
顔を上げた同田貫の眼は虚ろで、これは只事ではないと膝を付き肩へ触れる。火傷しそうに熱い躰に冷え切った掌から水が滴り、ふと足下へ散らばる赤い木の実に目を瞠った。
「これを食ったのか」
苦しげに眉を寄せ頷くと震える躰がぐらつく。荒々しく吐き出される息もまた熱く、呻く様は酷く痛々しい。
この木の実は確か葉ごと煎じて飲めば滋養強壮に効果のある薬草だった筈だ。だがここまでの効能であろうか。
「っまぶし……」
「どうした」
股座を手で覆い隠す同田貫がこちらを見上げる。上気した顔は強張りぶるりと一度大きく身を震わせた。
「ちんこが痛てぇっ……」
「!」
山伏は再び瞠目すると思わず下穿きを押し上げる控えめな屹立を凝視する。そうだ、確か見た目が良く似た木の実が成っていた。炒って磨り潰した実は所謂“精力増強”に大変効能があると。
「なぁッ俺どぉなっちまったんだよ……?」
ぎゅうと寄る眉根と熱い吐息に、不安げな視線を真っ向に受け止め逡巡する。毒等ではないだろうが、燻る儘躰の内に溜め込んでいては苦しかろう。山伏は微かに震える声を紡ぐ。
「抑え込むのは如何、吐き出してしまえ」
そっと手を握り、安心させるように微笑めば、同田貫は小さく頷いた。
膝を付き寛げた下穿きの陰から、褌を圧迫する存在へ布越しに触れる。熱を持ち脈打つ肉を露出させれば、皮に包まれた儘の控え目な陰茎が外気にふるりと震えた。
「っ……」
無意識に喉を鳴らし、山伏は撫で擦るよう指の腹で棹へ刺激を与える。敏感な昂りを直接触れられた同田貫は大きく肩を揺らし喘いでは、朧気に視線を彷徨わせた。荒い呼吸と水音は、幾分も響かず轟音に紛れ消えてしまうだろう。
「ぅ……くっ」
未だ皮被る陰茎への刺激だけでは物足りないのか、同田貫は膝立てたまま脚を擦り合わせる。ちらりと見遣り、汗に饐えた臭いに鼻腔の奥が痛むも、山伏は意を決して眼前の股座へ顔を寄せる。煩わしい心音が口を突く錯覚を嚥下し、大きく口を開けると犬歯の触れぬよう銜え込んだ。途端口いっぱいに広がる生臭い臭いと塩辛い独特の苦味に、嘔吐きそうになるのをどうにか呑み込む。
「っ、お゛うっ……んぇっ」
「やばっこれ……やべぇっ」
背を丸めてぎゅうと目を瞑り、同田貫は口淫による愛撫に惚けていた。舌先を細め皮の内側を舐り、同時に肉竿をゆるゆると扱きながら、徐々に顔を出す亀頭へ肉厚な舌を這わせる。滓を削ぐようにぐるりと回転させ、唇で挟んで皮を一気に押し下げた。
「んあああっ!」
大きく肩を震わせて、快感に喘ぐ同田貫はぺたんと地面へ座り込んでしまう。ちゅぽん、と中々に滑稽な音を立て離れた屹立は完全に中天を指し、口の端から垂れる涎を舐め取り山伏は蹲って再び大口を開けた。
「ぅあっ! なんっ……凄ェこれっ……!」
「ん゛むっ、え゛あ……っんん」
口内で滲む先走りを飲み込みきれず、派手に水音を溢れさせ、根元まで咥え裏筋を舌で舐め回す。頭を前後させ強く吸い上げながら、時折尿道口に舌を挿し入れて抉ってやると腰が戦慄いた。
「凄ェよこれっ……こんな、っうあああっああっ」
「んっ、んんぅっ、んお゛っ」
恍惚と涎を滴らせる同田貫を見上げ、山伏は眼を細める。夢中で腰を振っては、咽頭めがけ突かれ嘔吐くことすら愛おしい。己の奉仕により淫蕩に浸る男が、自らを性具のように乱暴に扱うほど悦楽に侵される様を、酸素の奪われる脳裏へ強く焼き付けた。
「んぁっ、出るッーー!」
「! んぶっ……ぁっ」
ガクガクと揺れる腰が一際強く喉奥を突き、陰茎がぶるりと震えた。堰を切り噴き出す熱い雄汁が口腔を充たし、勢いよく口から外れた後も白濁液は降り注いで、山伏の顔や肌蹴た胸を白く染め上げた。
「ーーはっ、はあっ」
「う、んう……っふ、ぁ」
愛しい苦味を呑み込み、山伏は満足した様子もない勃起へ付着した白濁を舐め取ってゆく。
「っまだまだ元気であるな……では、拙僧を使うといい」
「は、ぁ使う……って」
興奮に肌を赤く染めた同田貫の双眸は爛々とギラ付き強く琥珀色に煌めいて、凝視されていると気付くと背筋をぞわりと駆け上がるものを感じた。刺すような視線を感じながら、山伏は後ろ手に膝を割開き尻臀を浮かせた。濡れ張り付いた白装束を、緩く勃ち上がりかけの肉茎を隠す褌を解いて捲り上げ、硬く閉ざされた後孔を見せた。
「ケツに入れんのか……入んのか?」
胸に付いた粘液を掬い取り、菊座の縁を柔く圧し深く息を吐く。潤滑油の力を借りて、つぷりと指が突き立てられた。
「心配せずとも、山に入る前はいつも禊をしておる……ん、んっ」
多少の異物感はあるものの、粘りのある音を立て徐々に菊蕾は広がっていく。眼前で後孔を穿る様子をまざまざと見せられて、同田貫はゴクリと喉を鳴らした。
「っは、あ゛っ……」
時間をかけ丹念に解された入口は赤く熟れ、呼吸に合わせて収縮を繰り返す。一旦指を引き抜いて膝裏から抱え込み脚を浮かせ、山伏は艶む。
「おいで」
「っ……お、ぅ」
相貌を見下ろし、次いで後孔とを交互に見詰め、同田貫は腰を押し付けてくる。せがむ熱が内腿を擦り、勢い余ってにゅるんとすべり挿入れられない。焦る様を眺め山伏が笑い、滑る肉刀の先を誘い込むように腰をうねらせた。
「う、っうぅ……」
「こ、こだ……っ、ん」
「うあっ……! は、はいった……!」
ぐちゅ、と淫らに水音を響かせて、ぴったりと腰が合わせられる。しっとりと汗ばむ肌に、冷え切っていた筈の躰に熱が伝播してゆく。
「っさぁ、好きなように動かしてご覧」
惚けた顔に汗が伝う、困ったように眉を下げ同田貫正国は戸惑い視線を彷徨わせた。こちらを見上げる山伏の燃え滾る焔の宿る瞳は楽しげに蕩け、腸壁は己をすっぽりと覆っては優しく舐ってくれる。密着する躰越しに、互いの心音が早鐘を打っていると知る。
「ッキツくて、生暖かくて……っぬるぬるして気持ちぃ」
いつの間にやら解いていた白装束へ手を付き、ゆっくりと抽挿を始めてみると、腕の中の太刀は眼を眇め熱く息を吐いた。深い呼吸に合わせ、抱き着いてくる襞が擦れる度に追い縋ってくるのが堪らなく気持ち良く、同田貫は夢中で腰を振った。
「はっ、うぅ、っああっ」
「っふ……んっくぅ、んぃっ」
眼前で小さく喘ぐ山伏の豊満な胸が上下する、その立ち上がった頂の赤い粒は先程喰らった実に似ている気がして、甘い香りに誘われる儘むしゃぶりついた。舌で捏ね啜れば蜜が滲む錯覚に、茹だった頭では今ここが幾ら人目は皆無な山とはいえ野外であるだとか、躰を暴くのが共に戦場を往く仲間であるとか、そういった意識が彼方へ飛ばされる心地だった。
笑いながら話すことによる振動が、啜る唇を通して思考を揺さぶる。
「ぁ、はっ、男の乳を吸っても、ッ何も出ぬぞ?」
ぷっくりと更に腫れた乳首を乳輪から歯で挟み、強く吸い上げた。同時に角度を変え抉った菊蕾が思い切り窄まって、山伏が痙攣し始めた。強烈な快感に痺れ、本能の儘に大柄な躰へ己の欲望をぶつける。瞼の裏には星が舞い、もがく腰を鷲掴んで深く強く中を抉った。
「っひ、あ゛ヒッ、っや、一旦止めっ……っ!」
「まっまたイくッ! ああぁあっーー!」
「っぁァッ……!」
勢い余って抜けた瞬間、どぴゅと噴き出した白濁が飛び散った。痙攣する山伏の自身と己の陰茎が擦れ合い、留まることの無い熱は昂ったまま二振りの間で腹を叩く。
「っま、だだ……はぁ、足りねぇッ」
「ふ、はぁっ……次は、拙僧がっ、動こう」
まるで何日も空腹だったような、耐え難い飢餓感はますます増えるばかりで一向に治まる気配もなく。いっそ怖気だす程に昂奮する同田貫を仰向けに転がし見下ろしながら、山伏国広は体内を渦巻く官能の業火に身を灼かれる思いだった。
法悦的な肉慾が、己の何もかもを浚ってしまう。灼熱の肉刀を納めながら、刺さんと光る琥珀から抗い背を向けて跨った。途端締め付けを強める自らの内壁が圧倒的な質量に蹂躙されてゆく。すっかり育ちきった陰茎を秘められた奥へ招き入れると吸い付いて愛撫して、荒々しい吐息を背へ受けながら、山伏はゆさゆさと尻を揺さぶる。
「深っ……っくあ、ふっ、んぐっ」
「うぁああっ搾り取られるッ……!」
自重もあり内腿を震わせて、泥濘んだ蜜路をずくずくと暴かれれば、胸中が何やら暖かなもので満たされる。同時に焦がれるような切なさが胸を締め付けて、堪えきれない嬌声と共に視界の端でちかりちかりと光が爆ぜた。
時たま下から突き上げられ、空気ごと押し上げられては指先から脳髄へ駆け上がる『快楽』以外の思考の一切が霧散する。陶然と笑みながら、山伏は快い浮遊感へ身を預けた。
「んっ、ぅあ、んあ、ぁっ」
「っまぶし……山伏っ!」
「ーーぁっ……どぉ、田っ貫……?」
躰が宙へ放り出された。錯覚かと思ったが、身を起こした同田貫に両腕を引き寄せられ腰を叩き付けられて、限界を越え押し進む熱棒に恐怖すら感じ、無意識に逃げる腰を固定される。四つん這いの姿勢を取らされるも、力の入らない腕では躰を支え切れずに肘を付いた。
「ひあっ、あ♡えっ……ぁあア゛ッ!」
背後から容赦無く責め立てられ、怒涛に押し寄せる享楽に最早抗う術を知らず、揺さぶられる儘に乱れ叫ぶ。甘く疼く虚穴の奥を、埋める昂りが愛おしい。
「んぁ、オ゛ッ♡オ゛あぁッ、ア゛ァッ!」
「はぁっ山伏っ山伏ぃッ!」
押し潰す勢いで突かれては堪らない、肉の当たる音と己の喘ぎ声が山に響いた。熱い、あつい、気持ちいい。沸騰するマグマに溺れ流されて、奔流が雪崩込んでくる。
「ーーああぁっ……!」
「ぐぅっ絞まる……射精るッ!」
覆い被さってくる同田貫に抱き竦められ、途端灼熱を流し込まれ山伏はびゅる、と己の陰茎から白濁を噴き出した。下腹へ叩き付ける熱量は三度目にして量も勢いも一等濃く多くて、視界は明滅を繰り返す。
「うぁ、あ、っあぁ……♡」
「っううぅ……っ!」
倒れ込んだ同田貫は疲労を顕に、暫く荒い呼吸だけが聴こえていた。萎え抜けてゆく杭を名残惜しみ一気に全身が弛緩する。脳髄と内壁を充たす多幸感と裏腹に、ぐったりと頽れる躰は全く力が入らず、小さく痙攣を繰り返していた。
少々バツの悪そうに同田貫が隣へ寝転ぶと、控えめに大粒の眼をこちらへ向ける。あんなに爛々と輝いていた戦場と見紛うた琥珀の双眸は陰を帯び、項垂れる姿は意気消沈と随分と大人しく。
「……すまねぇ、俺どうかしてた」
そっと眦を拭われて、離れようとする刀の腕を咄嗟に掴んだ。縋ったという方が近く、驚愕に瞠目した同田貫の相貌は酷く幼く映った。
「お主の喰らった実は、古くは煎じて媚薬に使われるもの……少々効き目が良過ぎたようだが、拙僧は苦しむお主を、助けたかっただけ」
気に病むことはないと頭を撫ぜて、それに、と未だ熱を持つ耳元で囁く。
「善かったのは拙僧とて等しく……嗚呼、種付けされてしまったな……濃い子種だ」
悪戯に笑めば、カッと上気して顔を背けてしまう初心な刀を愛しく想う。慈しみと庇護の情とが満ち満ちて、身を寄せてきた体温の高い躰を全身で包み込んだ。