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秋の終わり
 

 北風は乾燥した冷たい空気を運んでいる。同田貫は粟立つ寒気に首を竦め、視線を移動した先に談笑中の情人を捉えると脱兎の如く駆け寄った。息を切らせつつも己の襟巻を解き、きょとんと見上げる男の首へかける。
「あっあんまり前開いてッと風邪引くぞ……っ」
 小豆色の内番着をきゅ、と寄せるも視線を合わせられず語尾がか細くなってゆく。山伏は首元に巻かれた冬用の黒いふわふわの襟巻と、同田貫の耳と鼻を特に赤らめた横顔を交互に見詰め、つられほんのりと頬を染めた。
「……そ、それを言うならおぬしこそ」
 俯く山伏のぽそりと呟かれた声には隠し切れない喜色が滲み、隠れた口元は些か緩んでいる。素直になれない太刀は逡巡し、寒かろうと同田貫の大きく開いた胸元へ襟巻の端を当て、半分程解いたそれを同田貫へ巻き付けてやる。奇しくもそれは所謂恋人巻きで、自然と近付いた顔は双方火が出そうな程真っ赤に染まった。惜しまれながら散ってしまった紅葉の様だと、少し離れた所で茶を啜る和泉守と山姥切が呟いた。


おまけ?
「……なぁあいつらってさ」
「やることはやってるぞ」
「まじか……」

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